ソロ活おっさんのアローン飯なび

結婚できない男の楽しみは「食」のみ!一人でも入りやすい飲食店情報をお届けします。

 ※当サイトにはプロモーション広告が含まれています。

なぜパンは温めると美味しいのか、冷めると美味しくないのかを実験!その理由はでんぷんやグルテンの構造変化にあった

今日は家飯にするかな。
成城石井にて、ベーグルを買った。

成城石井自家製

胡麻とさつまいものベーグル

米粉入りのもちもち食感の生地に香ばしい黒胡麻を練り込み、自家製のさつまいもの甘露煮をトッピングしました。

朝飯はこれ!

成分表を見る。イーストを使ってるってことは…

発酵パン、ってことだ。
焼きたてジャパン22巻にもあるように。

普通の発酵パンであるフランスパンや食パンの内部に空気=気泡が入っているように、東のタルト生地にも、実は無数の小さな穴が開いてたっちゅうコトやな。

(引用元:焼きたて!!ジャぱん(22)[ 橋口たかし ]p178)

パンの内部(クラム)にも気泡の痕跡、無数の小さな穴を確認したからな。

皿に移して。

食ってみるとだな…思った以上に。
さつまいもの量、ケチってる。
上の方にちょび~っと、あるだけじゃねえかよ。
もっと内部、クラムの中にも、ダイスカットされたさつまいもをゴロゴロ入れてくれてもいいのによ。

そんで、温めずにそのまま食ったんだ。
そしたら、あまり美味しくなかったのよ。

だけど次の日。
温めて食った…


トースターで700ワット、3分…だと、クラスト(パンの外側)が焦げちまったな。2分30秒にすればよかった。

でも…

美味しかった!

んだよ。
温めずに食った時よりも、圧倒的に。
つまり「パンは温めると美味しくなる」ということよ。

なぜ、パンを温めると美味しいのか?
まあ、当たり前の事実という印象はある。
大森のトーチドットベーカリーに行った時も、温めるためのトースターが置いてあったし。

solomeshi.net帰り際、窓際にトースターがあることに気付いた。
パンの美味しい食べ方も書いてくれてある。

しかし、理詰めで説明するのはちょっと難しい。

色々と調べたところ、大きく2つの理由、でんぷんとグルテンそれぞれの構造変化が要因であるということがわかったので、紹介しよう。

(1)パンを温めるとでんぷんがα化するから

こちらの記事は、パンを温めるとその主成分であるでんぷんがどう変化するかについて詳述してくれている。

【α化とは?】美味しいパン作りに欠かせない化学変化「でんぷんの糊化」そのメカニズムを解説!  |  パン作りの教科書 by パン作り研究家 ナオキパン

naokibread.com82~83℃「完全なα化(糊化)」


この温度にまで達してようやくでんぷん粒は十分にα化した状態となります。

水を極限まで吸収したでんぷん粒からは更に多くのアミロースが溶出し、それらはゲル化してでんぷん粒とでんぷん粒の間を埋める役割を果たします。

でんぷんはα化、少し溶けた状態の方が美味しい。
米を炊いた時もそうでしょう。
水を入れ過ぎてベトベトになるとダメだけど、適量の水と加熱によりα化した米は、もちもちして美味しいだろ。

α化米(アルファ化米)とは?作り方や防災時の備えについてご紹介! | トヨクモ防災タイムズ

bosai-times.anpikakunin.com

α化は、糊化とも呼ばれており、文字通り糊(のり)のような状態になることを指します。つまり、米を炊飯器で炊き上げて、柔らかくなっている状態がα化です。 ただし、α化しただけの米は、放置すれば生デンプンに戻ってしまいます。そこで、前述したように急速乾燥させることで、α化の状態を保てるように処理したものがα化米なのです。 そのため、α化という状態そのものは、私たちがよく知っている「炊き上げた米」だといえます。

サツマイモも、加熱した方が甘いように。

サツマイモが甘くなる加熱のコツ - Z会おうち学習ナビ

www.zkai.co.jp

デンプンは水と加熱すると、やわらかい糊状になります。これを糊化と言います。加熱していないデンプンは鎖同士がぎゅっと詰まっていて酵素が入り込むことができないのですが、加熱することで鎖と鎖の間に隙間ができて水が入り込み、アミラーゼがはたらきやすい状態になります。

サツマイモのデンプンが糊化を始めるのが65〜75℃あたりから。一方、アミラーゼは80℃を越えると壊れてはたらかなくなってしまいます。したがって65〜80℃の温度帯がなるべく長くなるように加熱すると、アミラーゼが最大限にはたらき、甘味の強い仕上がりにすることができるのです。

冷めたパンは、いわばでんぷんが老化、老化でんぷんの状態。

米の食感 ~でんぷんの糊化と老化~ | 宝酒造 業務用調味料

chomiryo.takarashuzo.co.jp

●糊化でんぷん
生でんぷんに水を加えて加熱すると、密だった構造の間に水が入りこんで緩くなり、ほぐれた状態になります。この変化を糊化(α化)といい、この状態のでんぷんが糊化でんぷんです。
糊化することでお米は水分を含んだやわらかい、弾力ある食感になります。また、酵素の作用を受けやすくなり、消化できるようになります。

糊化でんぷんは、その後放置すると分子間から水が遊離し、再び生でんぷんのように密な構造になるため、結果としてボソボソとした食感になってしまいます。
こうした変化をでんぷんの老化といい、時間経過とともにごはんの食感が悪くなってしまう原因です。

だから、水を加えて加熱すると、老化でんぷんが再糊化。α化し、また美味しくなったんだ。

パンに霧吹きで水をかけ、温めて、美味しくするって技を。
マネーの虎に出てた職人さんもやってたからね。

solomeshi.net

マネーの虎で、めっちゃ怒られてたサラダパンの人(内村浩一氏)も、霧吹きでの水かけをやっていた。

そして、加熱したでん粉の構造はどうなるかというと。
パン内部、すなわち、クラムを比較するとよくわかる。

加熱前、でんぷんの構造が密になってるゆえ、若干、しぼんでいる。

こちらは加熱後。

でんぷん粒が水分子を吸収し(水和)、クラムは加熱前よりも膨らんでいる(膨潤している)のがわかる。

(2)パンを温めると、グルテングルテンゲル)からデンプンへ水分移行が行われ糊化が促進されるから

少し難しい話だが。
こちらの記事に語ってあることを、少し要約した。

食の専門家ブログ - 瀬口 正晴(パンを研究する中で)|ミールタイム

https://www.mealtime.jp/shokublog/mseguchi/2021/06/post-164.html

・・・熱はグルテンゲル中を冷たい方向に向かって伝導、拡散し、隣の気室界面に達し、次々にその繰り返しを行いクラム全体100℃の平衡化まで短時間のうちに到達する。グルテンタンパク質は比較的熱に安定な物質であるが、加熱変化は疎水的の相互作用の増加や水素結合の減少によるところが大きい。グルテンタンパク質の表面活性は加熱により変化し、グルテンゲルはキセロゲル化する。

熱により小麦・グルテンゲルの中で大きく機能的に変化するのはデンプン粒である。その際グルテンからデンプンへの水の再配分が起こる。デンプン粒は、温度60-80℃ころ粒からアミロースの溶出が始まり、糊化は51-57℃頃から始まる。最大糊化吸熱(Tm)は60-66℃である。レオロジー的性質の変化は60℃からはじまる。アミロースの染み出る量の増加とデンプンゲル重量の増加は60-80℃の温度ではまだ小さいが,その両方は80℃以上の温度で増加する。デンプンはグルテンからの水分など使ってグルテンゲルに置き換わってデンプンゲルを形成する。脂質はラメラ相のまま界面を形成している。こうして連続グルテンゲルは連続デンプンゲルに変わる。…

かなり難しく専門的な記述になっているが。
パンを温めると、グルテングルテンゲル)の水分流出によって、キセロゲル化する。

キセロゲル(かたまり)になった状態というのは。
おそらく、美味しんぼ17巻にある、このシーンが参考になると思われる。

メリケン粉、つまり、小麦粉の成分は、デンプンとタンパク質です。水をかけながらもんでやると、デンプンは水に溶けて流れ出してしまいます。

しかし、タンパク質、つまり、グルテンは固まって、溶けずに手の中に残るんです。


(引用元:美味しんぼ(17)[ 雁屋哲 ]p155)

そう、ガムのような弾力を持ち合わせたお菓子のような感じになるってことだ。
でも美味しんぼに出てくる代用ガムは、でんぷんが流れ出ているので美味しくない。

しかしパンの場合、でんぷんを流すことはなく、グルテンから水分が移行する。(グルテンからデンプンへの水の再配分)

水分を貰ったデンプンは、(1)でも説明したように、加熱によりα化が促進され、風味・食感・味を向上させることができる。

以前も語ったように。

パンに霧吹きで水を掛けると美味しくなる理由を科学的に解説する

solomeshi.net

グルテンの水分が足りない場合は、このように水を吹きかけてデンプンにうまく水分を移行させるための工夫をするのもいい。

(3)パンを温めると、グルテンが硬化して生地がしっかりするから

(1)はでんぷん自体のα化、(2)はでんぷんα化のためのグルテンからの水分移行と、主にでんぷんの構造変化についてだったが。

グルテンについて、もう少し説明しよう。

グルテンも、もちもちした食感や弾力など、食感の面で重要な成分ではあるし。
食感だけでなく味の面においても、グルテングルタミン酸という旨味成分を含むので、重要ではある。

solomeshi.netこの記事の「小麦グルテンアミノ酸組成」を見ると。
グルテンには、グルタミン酸が豊富に含まれている。
つまり、生地の成分が多いお好み焼きの方が、グルテンの形成が多く、グルタミン酸も豊富なはず。

もんじゃは生地の水分が多すぎるがゆえ。
おそらくグルテンがあまり形成されず、うま味成分であるグルタミン酸お好み焼きよりも少ない。

というのが、自分の仮説だ。
つまり「旨味成分(グルタミン酸)の総量」という点で比較すると、もんじゃよりもお好み焼きの方が美味しいと考えられる。

味の素だって、昔は小麦から作られてたって話だからね。

Microsoft PowerPoint - 小麦と小麦粉の科学⑥.pptx - foodtopics_22_6.pdf

https://www.azeron.co.jp/_src/4532956/foodtopics_22_6.pdf?v=1728351912906

小麦粉中のデンプンを除去し、水分の無い乾物としてのタンパク質の構成比を見てみると小麦粉全体のタンパク質として、構成するアミノ酸の中でグルタミン酸が特出して大きな構成比を占める。グルタミン酸はコンブのうま味成分として知られたものです。
化学調味料グルタミン酸ナトリウム(味の素)は、現在は微生物による発酵法で製造されていますが、当初は小麦グルテンから塩酸による加水分解によって製造されていました。
パンを製造するのに、穀物学者もグルテンが重要で有る事は解明しても、それ以降の体系的な解明が成されていない様だ。グルテン中の粘着力のあるグリアジンと弾力性のあるグルテニンのアミノ酸組成を見ても、分析の結果は分かったが、組成差による構造解明は良く分からないのが実際の所です。

グルテン内のグルタミン酸が、温度によってどう量が変わるかについては情報がなかったけど。

2021-07 熱によってグルテンの形成阻害が起こる仕組みについて

https://nanolsi.kanazawa-u.ac.jp/10th-wpisymposium/assets/img/details/pdf/p-11.pdf

先行研究では小麦粉と水をまぜた生地を加熱することでグルテンの体積やタンパク質含量が減少することが分かっている。

とあるように。
グルテンを、常温以上の温度で加熱することで、タンパク質の含量が減るということは。
グルタミン酸の量に影響はあるかもしれない。

しかし実験結果によると75℃までは、グルテンの形成量においては、そこまで影響はないようだ。

むしろ、加熱によりグルテンを柱にすること、骨組みにすることが重要。
それによって、でんぷんの美味しさの流出を防止する。

グルテン|パティシエWiki/パティシエのための洋菓子・製菓用語集

www.patissient.com生地の中心温度が95~97℃に上がった際、形成されたグルテンの網目状組織は熱で変性して固くなるため、パン中にしっかりした骨組みができて冷えてもその形を保てる。でんぷんが壁、グルテンが柱の役割を果たしている。

以下の論文の46pにもあるように、「グルテンの硬化」とも言う。

小麦粉と焼菓子の物性

https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1968/27/3/27_204/_pdf/-char/ja

パン焼成時には デ ン プ ン粒 が グル テ ンか ら水 分 を 吸収 しな が ら膨 潤 糊 化 す る こ とで グルテンの硬化が 起 こ り,これ が 気泡 の形 成 や パ ンの 内 部 組織 の 固定 化 に役 立 ってい る33)。また,ス ポ ン ジ ケー キ な どの バ ッタ ー生 地 で は,糊 化 した デ ン プ ン粒 は卵 白泡 の 周 りに均 一 に 分 散 して 気泡 内 の ガ スを 保 持 し,気 泡 膜 を 強 固 にす る作 用 を 持 つ

そのため、でんぷん同様に、グルテンも温める意味がある。


(4)パンを温めると、パン表面(クラスト)のメイラード反応が促進されるから

クラスト(パンの外側)も、加熱により風味を向上させることができる。
学術的な論文においても。

食パンのクラスト形成に伴う表面色と香気成分の変化特性に関する研究 - 東京大学学術研究レポジトリ

repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp塩基性化合物としては、2-acetyl-1-pyrroline などのピロリン類やピラジン類などの含窒素複素環化合物が多く、小麦に含まれるもののほかに焼成プロセスのなかでクラスト部位においてメイラード反応の結果生成したと考えられる香気成分も含まれる。次に多いアルコール類には生地の醗酵プロセスのなかで酵母の働きにより生成したものが多く、ethanol は糖から生成するのに対して、2-phenylethanol に つ い て は phenylalanine か ら の 生 成 経 路 が 知 ら れ て い る(Hazelwood et al., 2008)

焼成、いわば加熱によりクラスト部位におけるメイラード反応が促進する。

メイラード反応(タンパク質に糖が結合した糖化)については。

solomeshi.net

の記事でも紹介したけど。
ヤンキー君と科学ごはん2巻のコラムも参考になる。

以上が、パンを温める理由。

(1)のでんぷん変化、そして(2)のグルテンからでんぷんへの水分移行、それによって生地にモチモチ感が戻ってうまくなる。
また(3)のグルテンの硬化は食感の向上と生地の形成に寄与し、(4)のメイラード反応は味をよくする。

加熱時の時系列的には、(4)→(2)→(1)→(3)かもしれないが、同時並行で起きている部分もあるだろう。

ただ(2)で紹介した論文にも「これも糖質、デンプンの役割が大きい。」とあるように、味の決め手はでんぷんの方が重要なので、でんぷんの変化を先に紹介した。
グルテンを形成しない蕎麦や、グルテンフリーのケーキだって、美味しかったりするようにね。

いかに水分と熱をデンプンに与えて、美味しくするか。
冷めて、老化でんぷんになったパンの生地を、もう1度α化(再糊化)し、風味をできたてに近づけるために。

パンを温めることは重要だ。


【アローン飯なび更新中!地図からおひとり様でも行きやすいグルメ情報が検索できます】

<最近追加したグルメコラム>
白味噌の甘さの正体、米と米麹の違いについて。

solomeshi.net


ブログランキングも参加中です。

にほんブログ村 グルメブログ 日本全国食べ歩きへ B級グルメランキング

グルメランキング