本日、閉店してしまった神保町の「たいよう軒」。
【閉店】神保町の老舗らーめん店「たいよう軒」が1月26日に閉店
自分は、神保町の近所に住んでるわけでも、職場でもないので、行ったことなかったのだけれど。
老舗の東京ラーメン、どんな味なのかなぁと気になり、閉店前に行ってきた。
平日13時過ぎ、外に5人待ち。
みんな閉店するもんだから、食べ納めに来てるんだね。
意外と回転は早くて。
5分ぐらいで「お客さん何にする?」と、店内の女将に声をかけられる。
えっと…初めてきたからわからない、前のおっさんがワンタン麺を頼んでたからな…よし、ワンタン麺と、チャーハンだ。
さらに5分後、計10分後ぐらいには、店内に入ることができた。
あ、ぶら下がってるメニューをよく見ると。
ワンタンメンだけでなく、チャーシューワンタン麺もあるみたいだ。
店先にもあったね。
こっちにしたい。
女将におそるおそる「すみません、チャーシューワンタン麺にまだ変更できます?」と聞くと。「はーい。チャーハンもたのむとすごい量だけど?」
ってことなので、「あっ、じゃあ半チャーハンで」と、チャーハンの量を減らす。
別に大食いじゃねえからな、俺は。
老舗だけど、ステンレス壁もピカピカできれいだね。
女将の動き、キビキビしてるな~。
料理を作ってる大将、夫婦で経営してるのかな?
今月で終了するっていうなら最後に、ラーメンおたくの俺がよ。
おたくのラーメンをしっかり評価してやるぞい!
ってね、あんた何様?って感じだけどね(笑)
ふむ、カウンター席に座って5分ぐらいでラーメンが来たぞ。
写真を撮る。
俺はいつも、ラーメンを撮る時はだね。
全体写真、レンゲに浸したスープのアップ、そして麺リフト、この3枚は欠かさず撮りたい。
しかし女将が言う「写真は1枚だけでお願いします」と。
ああ、んだよ…まあ仕方ないねw
まずはスープ…ずるずる、うむ!うまい!!
スッキリした鶏ガラの旨味…だが醤油ダレも使ってるんだろうな。
そこまで鶏の素材の味が強くくる感じはない。
で食べたラーメンの方が、鶏の旨味がガツンと来る感じだった。
まあでも古き良き東京ラーメン、中華そば、という感じか。
ラーメン発見伝13巻にも紹介されてたね。
これが「昔ながらの中華そば」という味わいでもある。
17巻では、昔の中華そばは、砂糖をかなり使ってたというエピソードが紹介されていたけれど。
たいよう軒のスープは、そんなことはない。
尖った甘味なんてのはなくて。
塩味・旨味・甘味のバランスが取れたスープだ。
よく言えば優しい味わい、と言えるが。
悪く言えばパンチが弱い、とも言える。
ラーメン発見伝18巻の巻末。
石神秀幸のラーメンコラムにもある。
東京ラーメンの元祖は、明治43年(1910年)に浅草に開店した「来々軒」で。
尾崎貫一氏と中国人コックが、中国から横浜の南京町に伝わった塩味の汁そばを、より日本人向けの味にするために濃口醤油を使ったりと改良して生まれたラーメンだと。
最近行った、国立科学博物館の「和食展」でも、来々軒のことは書かれてたね。
しかし、石神秀幸氏が語るように。
東京ラーメンの特徴として、醤油ダレが味の構成要素を大きく占めているがゆえに、ダシの濃度が低く。
昭和60年代の豚骨ラーメンブームに押され、東京ラーメンは物足りなくなったとね。
いわば九州系の豚骨スープの襲来、だ。
例えるなら、ODD Foot WorksのTokyo Invadorのように。
東京とか都会は、インベーダー(侵略者)がやってきては、既存文化を衰退させたり別の文化が隆盛したりと、浮き沈みが激しいからな。
実際、天下一品などのこってり系ラーメンだとか。ラーメン二郎などのがっつり系ラーメンが好きな方からすると。
やはり東京ラーメンのスープには、物足りなさはある。
例えば、ラーメン発見伝13巻にあるように。
まずこっちは大豆白絞油でローリエ、オレンジ・ピール、ニンニク、トウガラシを揚げて作った香味油だよ。これをスープの表面に浮かせてみようと思う…
で、こっちは、味噌、ゴマ、トウガラシ、シソを炒め、練り上げて作った特製醤(ジャン)……これを団子状にしてラーメンの上に乗せる。お客がお好みで溶かしながら味に変化をつけていくって寸法だ。
(ラーメン発見伝(13)[ 久部緑郎 ]p198)
油脂や香味油を浮かせたり、薬味などを入れたりといったコクの向上もされていないからな。
では麺と一緒にすする、ずるずる~っとね。
うむ、美味い。
細い縮れ麺だから、スープともよく絡むが。
かんすいも使ってるんだな。
ラーメンのひみつ めん|西山製麺株式会社
www.ramen.jpかんすいを小麦粉に加えると蛋白質(グルテン)に作用し、弾力も展延性も増し食味としてはコシ、滑らかさが増します。これは、グルテンが無機質、アルカリ性の物質に出会うと収斂する性質があるからです。
食塩とかんすいの小麦粉に及ぼす影響を比較しますと、小麦粉に水を加えると足があるがコシがない。食塩水を加えた場合コシは強くなるが足がなくなる。かんすいの場合はコシも強く足も長くなると良いことずくめ。このあたりがうどんとラーメンの麺の違いとなって表れてきます。
とあるように。
確かに、かんすいによって麺のコシや滑らかさは向上するかと思うが。
しかし個人的には、うまいうどんを食べた時のような麺の美味しさ。
すなわち、かんすいを加えることで、何か犠牲になっている小麦の風味もあると思ってる。
美味しんぼ2巻でも指摘されていたように。
麺は小麦粉から作るが、麺の腰を作るのは粉の中の蛋白質だ、特にグリアジンとグルテニンという二つの蛋白質が結合してグルテンが出来る、これが粘り気のある腰を作る。
練ったりふんだり寝かせたりするのも、このグルテンを作り出すためなんだ。
さらに中華そばの場合、グルテン形成を促進するために炭酸カリを主成分とした梘水(かんすい)と呼ばれる物を加える。これを加え過ぎると色が黄色くなり過ぎ、重曹くさくなる。
(美味しんぼ(2)[ 雁屋哲 ]p209)
まあそうとも言えないケースもあったりなんだけどね。
例えば町田のいぶし銀は、かんすいではないが重曹を使っていても、小麦の風味はしっかり感じるし。
solomeshi.net使っても別にいい気もするんだけれどね。
また、このいぶし銀の記事で、粘り気やコシを生むのは重合リン酸塩だという、美味しんぼ38巻の話を取り上げたけれど。
重合リン酸塩は、麺のコシに作用するでのはなく。
ミオシンとアクチンの結合を妨げる働きだという話があったりとね。
かんすい論争は難しいが。
麺の風味は変わるのは確か、だよな。
だから、小麦粉にかんすいや重曹を入れることを、自分も別に否定するわけじゃないが。
ただ加える量、そのさじ加減は、麺の風味に大きく影響するゆえ、重要だったりする。
というわけで、スープは優しい美味しさ、麺は小麦の風味は弱いがコシともちっとした食感で悪くない、という感じだったかな。
ただパンチがもうちょい欲しいか…東京ラーメンではちょっと物足りないか…
否!
チャーシュー、ほろほろ、うま。
このチャーシューをベクター(媒介者)として、麺と一緒にすすると。
しっかりした肉と麺のマリアージュ、濃厚とは違うが、ガッツリとした味わいとなる。
ちょっとタモリが好きな「満来」のチャーシューに似てるな。
ワンタンもそこそこ美味いが、チャーシューの存在感がすばらしい。
チャーハンと一緒に食べてもいいな。
ただ、チャーハンも食べてみたけど。
単体だと、少し味が弱い。
豚肉のイノシン酸、化学調味料(グルタミン酸ナトリウム)や醤油などが足りないか。
例えば、高井戸の「東軒」のチャーハンは美味いが。
その店はおそらく、結構強い味付けにしてるんだが。
卵を多く使うことで塩、味をマイルドにしてるんだ。
そして、米の甘味や旨味も塩や調味料で引き立てていたからな。
ラーメンと同じく、チャーハンも優しい味すぎる感じがしたかな。
というわけで、美味しかったけど、ちょっとパンチが欲しいという感じか。
何にせよ、ごちそうさまでした。
今までお疲れさまでした。
こちらは領収書。
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「あぺたいと 戸田店」の口コミを追加。
グルテンの凝固が進んでいる部分とそうでない部分、麺の食感のグラデーションが素晴らしく、更に小麦麺とソースを焦がし(キャラメリゼやメイラード反応)によって旨味も増幅。#あぺたいと #両面焼きそば #藤田ニコル / “藤田ニコルも行きつけの名店!「あぺたいと 戸田店…” https://t.co/hdYT5HMTHY
— 令和の寅次郎 (@reiwatorajiro) February 11, 2024
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