以前の記事で、店主がバケットに霧吹きで水を掛けていたのを見た。
このように、パンを焼く前に水をかけるのは有名な技でもある。
マネーの虎で、めっちゃ怒られてたサラダパンの人(内村浩一氏)も、霧吹きでの水かけをやっていた。
なぜ、この料理工程を行うとパンが美味しくなるか、その理由について考えてみたので、以下の項目で解説する。
1.水蒸気爆発による生地のクリスピー感向上
焼きたて!!ジャぱん7巻に。
フランスパンの皮がパリッと硬いのは、生地表面に付着した微小な水滴を高温で乾燥させるから。
(引用元:焼きたて!!ジャぱん(7) [ 橋口たかし ]])
水蒸気を放出させて外側に水滴を付け、フランスパンの味を向上させるシーンがあった。
アニメだと第25話らしいよ。
【焼きたて!!ジャぱん】焼きたて!!豆知識まとめ
そう、表面をパリッとさせて、食感を向上させる。
つまり、パンを焼くオーブンやトースター内で何を起こしているかというと…「水蒸気爆発」と言ってもいい。
蒸気爆発が起きる原理
蒸気爆発が起こるまでの工程を、順に説明します。
1.高温の溶岩や溶けた金属が冷たい水の中に入る
2.高温な物質の熱に触れて水が蒸発する
3.「蒸気膜」となり高温物質を包む
4.膜に包まれた高温物質は一時的に熱を閉じ込める
5.膜が破れて高温物質が漏れだす
6.漏れた高温物質と水が再び触れる
7.冷たい水と熱が反発し圧力が生まれ爆発する工程を追っていくと長い時間のように思えますが、一連の物質の変化はごく一瞬で起こることが多いでしょう。
・
・熱したフライパン
火にかけて高温になったフライパンを、すぐに洗おうと流水にさらした時¨ジュッ¨という音と共に、煙のようなものが出るのを見たことがある方もいるでしょう。
厳密に言うと多少異なる点はあるのですが、大まかな原理としては①~⑦と同じことがフライパンの上で起きています。
つまり、高温なものと冷たいものが合わさった時の力のぶつかり合いが、爆発に繋がるのです。
つまり水蒸気を高温で加熱することで、規模は違えど小さな爆発を起こし、パン生地表面をおそらく凸凹にし、クリスピー感を向上させるというわけだ。
バゲットも、それによってクリスピー感を向上させることができる。
パンを美味しく食べる方法
翌朝に食べることが、わかっていれば、ビニール袋に入れて封をしめておきましょう。 翌朝、全体にかるく霧吹きをし、強火で 焼くと、ふわふわカリカリの食感に。 バゲットは生鮮食品なので購入した当日にお召し上がりください。
2.乾燥防止
霧吹きにより、クリスピー感ももたらされるが、乾燥防止にも役立つ。
パン作りに必須?霧吹きのこと~パン生地は乾燥厳禁~ | 宝塚こ・むぎ
最終の発酵で乾燥させてしまうと、焼成時の膨らんだときに窯伸びせずにひび割れして悲しいパンになります。
以上の1と2は、外側の話で、
次の項目で、パン内側への作用を説明する。
3.温度上昇の時間稼ぎによるイーストの発酵促進
先に引用した水蒸気爆発の原理について、ここで注目すべきは「4.膜に包まれた高温物質は一時的に熱を閉じ込める」だ。
これは「周囲から熱を奪う」ことでもある。
「豪雨」の起こるワケ…たった「1g」の水が蒸発する時の「エネルギー」がカギだった!
ここでは、液体の水と水蒸気の間の変化に注目します。分子間の間隔が短い液体は、分子どうしが引き合う力が強くはたらいていますが、この力を振り切って分子がバラバラに飛び回る気体になるにはエネルギーが必要です。そのため、水が水蒸気に変わるときには、周囲から熱(エネルギー)を奪います。これを「蒸発熱の吸収」といいます。
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逆方向の状態変化にともなう蒸発熱も同じ大きさです。水1gが蒸発するには、2500ジュールの熱を周囲から奪う必要があり、水100gを6℃低下させうるだけの熱の吸収になります。濡れた肌が乾くときにすーっと冷たく感じたり、打ち水をすると地面の温度が下がるのは、このようにして蒸発熱が奪われるためです。
そう、周囲から熱を奪うということは、霧吹きで水滴が付着したパン表面付近を加熱すると、水滴の周辺は水蒸気に変わる過程で熱を奪おうとする。
オーブンやトースターによる加熱によって、パンの内部と外部に両方に熱は加えられてはいるものの、パン内部の加熱が、外部の「蒸発熱の吸収」によって、妨害される。
その妨害によって、いわばパン内部への加熱が、ゆるやかになる。
以下のサイトで説明されていることは、科学的にはそういう作用だろう。
焼成前のパン生地に霧吹きする理由は?比較してみた | お菓子・パン材料・ラッピングの通販【cotta*コッタ】
www.cotta.jpA
高さはあるが上から見ると形がいびつで、底面の焼き色の中心がずれている。
これは、中から膨らもうとする生地に対して表面が焼き固まるのが早く、水分のある底の部分から裂けている状態。
霧吹きをしない「A」は、表面に火が通りすぎて固まり、中の生地の膨張を妨げてしまう。
熱は、温度が高いところから低いところに移動するように。
温度が高い方から低い方へ熱が移動する理由|アルファラバルの熱交換器やヒートポンプによる排熱利用と省エネならMDI
www.mdirect.jp熱いお湯と冷たい水が混ざると熱がお湯から水へ移動して、どちらもぬるま湯になります。これは、お湯の方の激しく動いている分子が、冷たい水の方の分子に衝突しているためです。動きの速いものと遅いものが衝突すると、速い方はその速さが少し落ちて、逆に遅い方は動きが速くなります。
パンの表面外部の水滴の方にまず熱を移動させることで、内部が発酵するまでの時間を稼ぐ。
つまり表面のクリスピー感だけでなく、発酵のための時間稼ぎも出来るというわけね。
ちなみに、マネーの虎に出てきた内村浩一氏が、霧吹きをしていたパンは、持参した冷えているものなので。
既に二次発酵も済んでいると思われる。
ただもし、発酵を追加で進める場合は、霧吹きがプラスに作用する場合もある。
パンを発酵させる温度の考え方【こね上げ温度・1次発酵・2次発酵】 - ふくともパンブログ
によると、二次発酵の最適温度は40℃。
室温は難しいので、オーブンやトースターを使うことになるだろうけど、逆に温度が高すぎになってしまうかもしれない。
だけど、霧吹きで表面に水滴を付着させることで。
パン内部の温度が高くなりすぎず、イーストの活動を再活性化させ、パンをふっくらさせるための発酵を追加で進ませることができるというわけね。
4.味付け
水以外のものをパンに掛けるという、興味深い実験をした人がいる。
麦茶や紅茶をかけて、焼き上げるというもの。
『食パンに麦茶を吹きかけて焼くと、高級パンになる!』を検証してみました。 | 栄養士ママそっち~の簡単美味しいサイクル献立
その方が美味しくなるらしい。
もしかすると、140℃以上で顕著に進む、糖とアミノ酸が結合する化学反応である「メイラード反応」によって、味わいが向上しているのかもしれない。
ただ、乳糖を含むミルクティーでもない限り。
麦茶や紅茶には糖質はほとんど含まれていないゆえ、メイラード反応は起きてないかもしれないけれど。
味付として、霧吹きが活用されるパンもあるかもしれないので、また発見したら紹介する。
【アローン飯なび更新中!地図からおひとり様でも行きやすいグルメ情報が検索できます】
<最近アローン飯なびに追加したお店>
「あんバター&バル Bon mou(ボンムゥ)」の口コミを追加。
デンプンの糊化はピーク粘度は80℃から95℃の間、それ以上だと粘度が低下し、カチカチの生地になっていく…らしいので。もう1回温める、ってのは簡単でもないか。#東府中駅 #京王リトナード東府中 #東府中カフェ / “東府中駅の北口直結「あんバター&バル Bon mou(ボンム…” https://t.co/A9h7GZtttR
— 令和の寅次郎 (@reiwatorajiro) May 5, 2024
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